みなさん、話題の映画『国宝』はもうご覧になりましたか?
まだこれからという方も多いと思うので、今日は映画をより楽しむために劇中で取り上げられている「曽根崎心中(そねざきしんじゅう)」について触れてみたいと思います。
かくいう私も、数年前に友人と坂田藤十郎さんの「曽根崎心中」を観に行ったことがあります。
あの時はただ夢中で見入っていましたが、今振り返ると“藤十郎さんのお初”を生で観られたことは本当に貴重な体験だったのだな、としみじみ感じます。
「曽根崎心中」とは
「曽根崎心中」は、近松門左衛門によって1703年に書かれた人形浄瑠璃で、その後すぐに歌舞伎としても上演されました。
実際に大坂・曽根崎で起きた心中事件を題材にしているため、当時の庶民の心に強く響き、大ヒットを記録しました。
あらすじ
舞台は18世紀初頭の大坂・曽根崎。
主人公は油屋の手代(奉公人)の 徳兵衛。
彼は誠実で義理堅い青年ですが、周囲の思惑に巻き込まれてしまいます。実は、親戚の口車に乗せられて借金の保証人となり、さらに結婚話まで勝手に進められてしまうのです。好きでもない相手との縁談を強いられる苦しさに加え、多額の借金返済を迫られ、徳兵衛は追い詰められていきます。
そんな彼を支えるのが、北新地の遊女 お初 です。
遊女であるため身の自由はなく、恋愛も許されない立場にありながらも、心から徳兵衛を思い続けています。二人は表立っては一緒になれない関係ですが、互いをかけがえのない存在として信じ合っていました。
物語の山場は、徳兵衛が親戚から裏切られ、借金を肩代わりすることもできず絶望に沈む場面。
そんな彼の苦境を知ったお初は、自分の命をも差し出す覚悟で「それなら一緒に死にましょう」と訴えます。
二人は堂島新地の遊郭を抜け出し、夜の曽根崎の森へ向かいます。
途中、縁日に紛れてお初が徳兵衛の腕に匕首を当て、観衆に「徳兵衛は決して裏切り者ではない。私と心中を決めた人です」と証明する場面は、後世に残る名場面です。
最後に森にたどり着いた二人は、互いの愛を確かめ合いながら、来世での結びを誓い、命を絶ちます。
「今生では叶わぬ恋を、せめて死後の世界で――」
この悲恋こそが、『曽根崎心中』の大きなテーマであり、観る者の胸を強く打つ理由でもあります。
作品の意義と魅力
- リアルな題材
当時実際に起こった事件をもとにしているため、庶民にとって身近で切実な物語でした。 - 世話物の代表作
武士ではなく町人を主人公に、恋やお金の問題といった現実的なテーマを描いた作品です。 - 「心中もの」ブームの始まり
大ヒットの結果、同じような題材の作品や実際の心中事件が増えるほど社会的影響を与えました。
今も愛される理由
「恋と社会の板挟み」「愛を貫くための選択」というテーマは、江戸時代だけのものではありません。令和の今でも文楽や歌舞伎で上演され、観客の心を揺さぶり続けています。
私自身、観劇を思い出すと、お初と徳兵衛のやるせない想いが胸に迫ってきます。
「愛とは何か」「生きるとは何か」――時代を超えて考えさせられる作品なのです。

正に、映画「国宝」のテーマともマッチしてるからこそ、劇中内の歌舞伎が真に迫ってきました。
今後の上演予定について
今後の2025年・2026年の歌舞伎座や文楽公演の予定については、現時点で公式の発表はありませんでした。(2025年9月現在)
しかし人形浄瑠璃での「曽根崎心中」の公演はありましたので、国宝を見て、早速見たい方にはオススメです。
もしかしたら、「国宝」のヒットを受けて見たい方が増えてる分、今後公演として歌舞伎で上映されるかもしれませんよね!その時は私もまた見に行きたいと思っています。
確定している最新の上演スケジュールは日本芸術文化振興会HPに、歌舞伎の上映スケジュールなどが随時掲載されます。観たい方はこまめにチェックされるのがおすすめです。
まとめ
映画『国宝』をきっかけに「曽根崎心中」に興味を持つ方も多いのではないでしょうか。
私自身、数年前に藤十郎さんのお初を観た経験を「宝物のような時間」だと感じています。
時代を超えて人の心を打ち続ける近松の世界。映画館で、劇場で、その深い物語に触れてみるのも素敵な体験になるはずです。