
前回のコラムを読んだ、私の友人たちから「うちも同じ」「わかるよ」とたくさんのメッセージをもらいました。
前回叔父の介護の実体験(現在進行中)の記事を書きました。その際に友人からの反響の多さにびっくりしました。
それだけ、レビー小体型認知症の介護に悩んでいる家族が多いということなのだと思います。
介護の現場は想像以上に複雑です。
元気そうに見えるのに幻視(見えないものが見える)や妄想が出てくることもある。
「うちの父も“誰かが家に入ってくる”って言うの」
「財布がないと大騒ぎして警察を呼ぼうとした」
そんな話を聞くたびに、私も胸が痛くなります。
「お金がない」「誰かが入ってくる」はレビー小体型認知症のサインかも
レビー小体型認知症は、脳に「レビー小体」と呼ばれる異常なたんぱく質がたまることで、幻視・妄想・認知の波などが起こる病気です。
アルツハイマー型認知症よりも幻覚・幻聴が強く出やすいのが特徴で、初期のうちは記憶はしっかりしていることも多いため、周囲から「まだ大丈夫」と思われてしまうことがあります。
代表的な症状には次のようなものがあります。
- 「お金がない」「財布を盗まれた」と思い込む(被害妄想)
- 「誰かが家に入ってくる」「人影が見える」(幻視)
- 夜中に誰かが立っている・虫が這っているように見える
- 昼と夜の区別がつかず、生活リズムが乱れる
- 体がこわばる、歩き方が小刻みになる(パーキンソン症状)
特に、「財布がない」などの訴えがある場合、実際に本当に紛失していることもあるため、まずは一緒に探してあげることが大切です。
それでも見つからない場合や、本人が強く不安を訴える場合には、警察に通報しても構いません。
本人の不安を軽減するためにも、「きちんと探してもらった」という安心感を与えることが、症状を落ち着かせるきっかけになることがあります。



私の叔父にも「財布がない」と連絡が頻回にきて「誰かが盗みに入った」という場合は、そんなに心配なら警察に通報しなと言っています。
進行とともに見えてくる「介護の限界」
初期のうちは、「まだ元気」「会話もできる」と感じることが多く、介護認定でも要支援〜要介護1程度になることが多いです。
しかし、中期以降になると次第に次のような変化が現れます。
- 自分で、服薬管理ができなくなる
- 幻視や幻聴が頻発する(2階に人がいるとか壁の中に人がいるというあり得ないことを言います)
- 物を隠す・家族を疑うなどの行動が増える
- 夜間の徘徊、昼夜逆転
- 感情の起伏が激しくなり、暴言が出る
さらに進行すると、身体の自由がきかなくなるパーキンソン症状が強くなり、転倒や寝たきりのリスクが増します。
最終的には会話や食事が難しくなり、誤嚥(ごえん)性肺炎などの合併症が命に関わることもあります。
レビー小体型認知症の怖さは、「頭はしっかりしている時間がある」ため、家族が疲弊しやすい点です。
一瞬正気に戻ったように見えると、「さっきのは気のせいだったのかも」と思ってしまう。
でも、それは病気の特徴で、本人もどうしていいかわからず不安に押しつぶされているのです。



私の叔父に泥棒扱いした割には、後日見つけたよと連絡あっても、私を泥棒扱いしたのを忘れてるのか謝罪がないので、モヤモヤします。
本人の施設拒否と家族の限界のはざまで
本人は「まだ自分でできる」「施設なんて嫌だ」と拒否する。
でも家族は、夜中の徘徊や暴言、通報騒ぎに疲れ果てていく。
特別養護老人ホーム(特養)は要介護3以上でないと入れないのが基本。
要介護1〜2では、デイサービスやショートステイで対応するしかありませんが、夜間対応や突然の幻覚には限界があります。
「もう自宅では無理かもしれない」と思っても、本人の同意が得られずに入所できないケースも少なくありません。
でも、“施設に預ける”=“見放す”ではありません。
家族と本人、両方の命を守るための選択でもあるのです。
施設に入ることで、服薬や睡眠が安定し、落ち着くケースも多く報告されています。
家族が無理をして倒れてしまっては、本末転倒。
「介護を続ける」よりも、「介護を続けられる状態を保つ」ことが大事です。



介護制度を使うことは、介護のプロに任せることでもあるので、罪悪感なくご利用ください!
家族ができることと、頼っていい場所
介護は一人では抱えきれません。
- 市区町村の地域包括支援センターに相談
- ケアマネジャーと「次の段階」を想定したケアプランを立てる
- 認知症カフェや家族会などで情報共有する
- 医師に「夜間の幻視」「妄想」を記録して伝える
これだけでも、支援体制がずっと変わります。
また、医師や介護職に「本人が施設を拒否している」と正直に話しておくことで、第三者の視点から説得してもらうこともできます。



地域に認知症カフェいいですよ!お茶しながら介護の話をすることで、愚痴が言える場所って大事と思いました。
終わりに──“壊れない介護”を
レビー小体型認知症の介護は、想像以上に心が揺さぶられます。
被害妄想で責められたり、何度も通報されたり。
怒りと罪悪感の間で泣いた夜もありました。
でも今振り返ると、本人が見ている世界の中には、本人なりの「現実」があるんです。
否定するより、「怖かったね」「一緒に探そうか」と寄り添うことで、少しずつ安心を取り戻せることもありました。









